それは2011年のこと
「遅刻するのは当たり前」な自由奔放の国、イタリア。
始業時刻になっても全員揃っていないのは日常のシチリア島で、ある不思議なことが起きました。
なんと、あの遅刻が当たり前の気風で暮らす社員たちが誰も仕事に遅刻しなかったのです。
「何かが変だ、みんなが仕事に遅刻しない」
イタリア・シチリア島に住む電気技師、フランチェスコ・ニコシアさんはある奇妙なことに気づきました。
いつも通り出勤しているのに職場に早く着いてしまう、ということが続いたのです。
時計の故障かと思い調べてみたところ、なぜか家中すべてのデジタル時計が15~20分
早く進んでしまっていることが判明。最初は家のだれかのイタズラかと思っていたのですが、
職場の他の人達にも同じ現象がおこりはじめ、誰も遅刻しなくなってしまったのです。
さすがに不思議に思ったフランチェスコさんはもう1人の電気技師、アンドレア・デ・ルカと共にネットで事例を募集したところ、
島中のデジタル時計が狂ってしまっているというとんでもない事実につきあたりました。
島では幽霊の仕業説から火山活動の活発化説まであらゆる可能性が論じられちょっとしたパニック状態になってしまったのです。
(当時を報じたニュースサイトはこちら)
カタニア大学の電気工学科の教授、エマニュエル・ディレトーソ氏は
「電力網に接続されている発電機のうち、例えば電圧の変動が大きい太陽電池のようなものが周波数に微妙な影響を与えている可能性がある」との仮設を立てました。
周波数が安定しない電流がコンセントから時計に流れた結果、時計の進みが狂っているという仮説を地元のテレビ局で紹介しています。
しかし、本当に?
結局、はっきりとした原因は解明されていません。
エマニュエル・ディレトーソ氏が語った仮説はあくまで仮説であり、それが正しいと証明されてはいません。
また、当時のニュース記事では「狂っていたのはデジタル時計だけで、アナログ時計は正しい時間を刻んでいた」というような文章も見受けられなかったことから、奇妙な都市伝説が生まれました。
それが、「シチリア島で時空の歪みが発生した」というものです。
ニュースに尾ひれがつくについてしまい、「シチリア島は時空の歪みが発生するスポット」として紹介されるようになってしまったのです。
今では時計は正しい時間に戻され、時計の狂いもないようですが、「シチリア島では15分早く時間が進む」という噂話が独り歩きしてしまっているようです。